低レベルの恥ずかしい失敗
ある事業部のHPをリニューアルすることになった。ついでにサーバーもGMO系からXserverへ乗り換えることにした。Xserverの方が管理がしやすいからね。だが、同じサーバーでメールも運用していた。メールには最近あまり使っていない、古いドメインだったのだが、それでも、受注用などで使い続けている古いメールアドレスが、いくつかあった。そしてなんと、私は、そのことをすっかり忘れていたのだ。いや、正確に言うと、メールの送受信に支障が出ないよう、DNSでHPだけ宛先を変えるようにしなければいけない、ということを忘れていて、単純にDNSをXserver用にポチッと切り替えてしまったのだ。ぼーっとしていたとしか、言いようが無い。
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ドメインはもともと、Xserverで管理していた。サーバーを他社からXserverへ切り替える場合は、この状態でポチッとするだけで済んでしまう。
ここでもさらに失敗
このネームサーバーの設定変更をここでしてしまうと、当然のことながらDNSレコードもすべてリセットされる。その前にせめて、スクリーンショットだけでも取っておけば、切り戻すことも可能だったのだが・・・。
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失敗に気づいてから
失敗に気がついたのは、HPのリニューアル、つまりサーバーを切り替えてしまった翌日の早朝であった。早朝、AM6時前、目が醒めた瞬間に「やっちまった!」と気がついたのである。あー、一体なぜ、24時間早く気が付かなかったのだろう。すぐに飛び起きてPCに向かい、DNSの設定変更に着手した。メールだけ、元のGMOの方にDNSの宛先を向ければいいんだろ?まだ、傷は浅いぞ、と。しかし、これがうまくいかなかった。GMO系(iClusta)のIPアドレス、またはサーバー名が、調べてもなかなか出てこない。いまからサポートに問い合わせても、返事がいつ来るかわからない。自分でなんとかするしかなく、設定とテストの繰り返しとなった。そしてなんとか、GMOのサーバーでメールが受信できたりもしたのだが、遅延が酷かったり、どうも安定感が無い。こりゃ、設定が正しくないんだなと直感。実際、あとからわかったのだが、その直感は正しかった。私のDNS設定の理解がいまいちだった。
どうやって収束させたか
たぶんAM10時ころ、DNS設定での古い方のメールサバーの復旧を諦めた。確認したところ、使っているメールアドレスは、5個くらいだった。潔くXserverの方でメールアドレスを設定し直そう。幸い、これらのアドレスを使っている社員は、メールソフトとして、サイボウズ・オフィスのEメール機能を使っていた。であれば、メールサーバーの設定変更も管理画面でできる。古いサーバーに取り残されるメールは、WEBメールで取りに行けば良い。(幸いなことにWEBメールはDNSを切り替えたあともアクセスできる)そうして昼過ぎには、なんとか、メール送受信可能とし、あちこちにお詫びと連絡。悪夢のような数時間が終わった。
失敗で生じた損害
失注などの目立つ損害は幸いなかったようだ。しかし、収束させたつもりだったが、やはり設定漏れがあって、その後何件か、メールが使えなくなってるよ〜というご連絡をいただき対応。とにかく、少なからぬご迷惑をおかけした。また事業部の担当役員からどの程度の損失になったのか、損害評価を出せと言われ、報告書を上げたが、特にお咎めはなかった。しかし、自分のミスで発生した損害を自分で評価するのはとても難しい、と痛感した。というのも、「損害は少なかった、と思いたい」という強烈なバイアスがかかってしまうからだ。特に今回は、受信しそこなったメールがどれくらいあったのかを推定する、というところがあった。直近1ヶ月間のメールの受信実績から、今回問題が起きていた約1日間に届かなかったメールの数と種類を推定するという方法を取ったのだが、あくまで推定。その「推定」にバイアスがかかると、それはもはやポエムだろう。一人情シスの弊害は、実はこういうところに現れるのかもしれませんぜ。
本来、どうすべきだったか
サーバーとかDNSについて詳しい人は、ここまで読んでこんなバカもいるのかと大笑いされていると思う。ここは、そこまで詳しくない人のための解説だ。失敗した人からの解説(笑)
DNSとは、ドメイン名をIPアドレスに変換してくれるコンピュータのこと。ドメイン名を使うものは何でしょう?そうです、HPとメールですね。メールとHPを同じレンタルサーバーで運用している場合は、設定は簡単で、このドメインはこのIPアドレスに変換、で済んでしまう。しかし、メールとHPを別々のサーバーで運用する場合は、DNSの設定で、HPのサーバーのIPアドレスはこれだけど、メールサーバーのIPアドレスは、こっちね、と個別に設定を書き込んでやればよい。それだけのことなのだが、今回の感想として、メールの設定だけ変更するのは、難しく感じた。迷惑メール対策で設定も増えているので、いじるのがコワイ。それより、HPの方だけ、設定で別のIPアドレスに向けてやるほうが簡単に思える。
また、話が急で準備が間に合わない場合は、DNSをいじったりせず、リダイレクトで新HPを表示するようにするべきだろう。(今回もそうすべきだったね)リダイレクトのメリットは、すぐに元に戻せることだ。ローンチ時にトラブルが発生した場合に切り戻せることができるというのは、保険としてありがたい。気持ちにもゆとりができる。また、リダイレクトは、HP制作系の人たちも慣れているので、頼みやすい。
「どうすべきだったか」まとめ
- 一旦リダイレクトで、新HPをローンチ
- メール(メールサーバー、メールソフト)の切り替え準備
- DNSの宛先変更(元の設定も切り戻せるように設定内容をスクショなどで残す)
得られた教訓
いったん、ことが起こると、冷静な対応は難しい。朝8時ころには、メールがエラーだという電話が入り始め、メールがエラーになってます、という周知の連絡も出しながらの対応で、自分ひとりの手には余る状況だった。不幸中の幸いは、直感に従って原状復帰を諦めたことだ。また忙しい時に振られた案件は、可能なら少し待ってもらって考える時間を作ったほうがよさそうだ。特に簡単に思える案件のほうが、危ないかもしれない。これなら簡単だ、と思った瞬間、自分は事故のへの入口に立っているのかもしれない。