前置き:なぜこの話を書くのか
IP電話について、人に説明するほど、詳しくないのだけど、それでもこの記事を書きたくなったのは、前任者が導入したIP電話(つまり私の責任ではないw)でトラブルをいろいろ目の当たりにしたから。そして今回、勤務先で新たにIP電話(ソフトフォン)を導入することになり、改めてネットでトラブル例を調べてみたものの、ネガティブな情報はほとんど出てこない。それで自ら導入担当者向けに、ユーザー目線での情報提供をしてみたくなった。
IP電話とは
IP電話とは、簡単に言ってしまうと、これまでの電話回線網を使わず、インターネットを通信経路として使う電話のこと。そういう意味では、Lineの音声通話だって、IP電話の一種だが、ここで取り上げたいのは、ビジネス用途のIP電話。私の勤務先で数年前に導入したIP電話は、各電話機にIPアドレスを持たせ、クラウドPBXを使うもの。イメージとしては、PCがインターネット経由でクラウド上のサーバーにアクセスするのと同じで、電話機はクラウドPBXにアクセスする。電話機はインターネットに接続できる環境さえあれば、どこでも同じ電話番号で使える。だから営業拠点の移転や統廃合の際も電話番号の心配をする必要がない。電話機が「電話番号を持っている」のだから。確かにこれは便利だ!
初期費用がかからない?
従来のビジネスホンは、建物のどこかにPBXと呼ばれる装置を設置する必要がある。PBXとは、「Private Branch eXchange」を略した言葉。日本語では構内交換機と呼ばれるもの。大きさは小さいものだと大きめのデスクトップPCくらい。外線ボタンの設定や電話機の内線番号などは、このPBXで設定する。電話の「主装置」と呼ばれることも多い。さて、これが高いんですね。小規模なオフィス向けのものでも大抵、100万円以上する。さらに電話機とセットになっていて、主装置を交換しようとすると、電話機も全部入れ替えってことになる場合が多い。ビジネスホンで使う多機能電話機(外線や内線のボタンがたくさん付いているヤツ)はだいたい、5万円くらいするので、10人くらいのオフィスでも、諸経費含めてすぐに200万だ、なんてことになる。この小さな事務所の電話のために200万?それに対して「クラウドPBX」は、PBXを買う必要が無いので、初期費用はかなり安くなる。
安い? 結局、高いんじゃね?
初期費用は安い。しかし、注意しなければならないのは、クラウドPBXの使用料は、ずっとかかり続けるということだ。装置を購入した場合の初期費用は、大抵、法人ではリースにすると思うが、仮に300万円として計算しても、毎月5万円を5年払えば、あとは再リース料(それまでの1ヶ月分で1年間リースできる)のみ。対してクラウドPBXの方は「使用料」なので、ずっとかかる。安いと思ったらいつのまにか、逆転してた、なんてことになる。さらに言えば「使用料」は今後、値上がるかも知れないのだ。
タフなPBX
使用料はかかり続けるけど、メンテナンスは不要だろ、と。仰る通りです。しかし、オンプレミスのPBXって、なかなかタフで、10年間故障知らずなんていうのが珍しくない。古いものは停電後の再起動で壊れてしまうことが多いという話も聞くが、最近のPBXはバッテリーを内蔵していて、停電時も1〜2時間は動作するので、そういうリスクも減っていると思う。意外とタフで長寿命なのだ。それでもクラウドの方が安い、と判断してしまっていいものだろうか?
クラウド系の良いところ
クラウド系の方がよいところは、前にも書いたが、電話機の移動が簡単なことだ。LANケーブルさえあれば、どこに持っていっても同じ電話番号が使える。電話機が電話番号を持っているからだ。対してオンプレミス系(事業所内にPBXがあるもの)の電話機は、イメージとしてはモジュラーケーブルが電話番号を持っているような感じで、主装置での設定変更が必要。同じフロアのちょっとした配置換えでも技術者を呼ばなければならない場合がある。頻繁に電話機を移動したり、事業所の新設や統廃合を行う業態であれば、クラウド系のほうが、様々な状況に柔軟に対応できる。移設もPCのように電話機を自分たちで運んでしまうだけで済んでしまう。電話番号が変わらないので、そのフォローも不要だ。結果として、使用料がかかり続ける問題を差し引いても、コストを抑えられる可能性が高い。
費用ではなく用途で比較すべき
というわけでクラウド系の電話とオンプレミス系の電話、どちらが優れているかは、費用で比較するよりも、想定している用途で選ぶべきだと思う。「初期費用がかかりません!」なんていうセールストークには乗せられてはいけない。次はIP電話のトラブル例について、書いてみたい。