【導入レポート】PLC

ネットワーク

PLC(ピーエルシー)とは?

PLC(ピーエルシー)とは、Power Line Communications の略。直訳すると「電力線通信」だ。2つ以上の通信機器(アダプター)を離れているコンセントに挿し、リンクさせて使うことから「コンセントLAN」と呼ぶこともあるようだ。

LAN配線もWi-Fiも難しい状況で

勤務先の会社が運営するある店舗から、バックヤードのPCが壊れた、という連絡を受けて見に行った。調べるとPC自体は無事で、ネットワークがダウンしていることがわかった。ルーターがあるのは別のフロアで、PS※の中に来ているLANケーブルは生きていた。従って障害はそのフロアの天井裏を走るLANケーブルの何処か、ということになる。本来は天井裏のLANケーブルを配線し直せばよいのだが、業者さんに頼むことになるので、復旧するまで時間がかかる。もちろん費用もかかる。商品管理に使うPC1台だけのためなので、なるべく簡単に済ませたい。PSからバックヤードまでのネットワーク接続を考えれば良いのだが、直線距離にして15Mほどある。Wi-Fiも考えたが、PSのあるバックヤード→接客スペース→PCのあるバックヤード、という3つのゾーンを通る必要があり、ドアや壁などの障害物が多い。
※PSというのは、「パイプスペース」の略で、建物内を縦に貫通させて電力線、電話線、ネットワークケーブルなどを通すためのスペース。メンテナンスのためのドアを開けると、写真のような感じでケーブル類にアクセスすることができる。

PS(パイプスペース)とは、こんな場所です。ビルなら各フロアにあるはず。

PLC(ピーエルシー)に助けられた!

そこで先述のPLCを思い出し、試してみることにした。TP-Link(ティーピーリンク)製のPLC、「AV600 TL-PA4010KIT」を購入。価格は¥6,000弱だったので、失敗しても許されるw

PLC

PS内にたまたまあったコンセントにPLCのアダプターを挿したところ。このフロアの電力線の大元に近いコンセントのはずなので、設置場所の条件は良かったのではなかろうか。このPLCアダプターは、コンパクト※な設計なので、隣の挿し口を邪魔することは、まず、ないだろう。LANケーブルの差込口は、アダプターの底部にあるので、写真のような付け方が自然。
※WxDxH=52x28.5x65mm

写真はリンク済みのもの。3つの緑のLEDの下に、PLCアダプター同士をリンクさせるためのボタンがある。そのボタンを押すと、真ん中のLEDが点滅し始める。点滅し始めて2分以内に、リンク先のPLCのリンクボタンを押してやると、リンクが確立し、点滅が点灯にかわる。Wi-FiルータのWPSによる接続と似たようなイメージ。(ちなみに一番上のランプは、コンセントに指した時点で点灯。一番下のランプは、LANケーブルを挿すと点灯)

リンク先のPLC機器。PCが直ぐ側のデスク上にあるので、逆さまにコンセントに挿してみた。ぐらつきもなく、問題なし。ちなみに記事内では、便宜的に「リンク先」と書いているが、2つとも全く同じもので、親機と子機の関係ではない。どちらかのボタンを押したら、もう一方のボタンを2分以内に押せばよい。2分以内に「リンク先」のボタンを押しても、真ん中のランプが点滅のまま、2分以上経過してしまったら、リンクに失敗したことを意味する。リンクできた場合は、点滅から点灯に変わる。リンク直後は、点灯後、再び点滅するなど、少し不安定だったが、1分程度で安定。

PLCは、万能ではない

実は最初、ルーターのあるフロアのコンセントと障害が発生したフロアのバックヤードのコンセントまでをこのPLCで直接リンクできないか、試してみた。当たり前なのかもしれないが、結果はNGだった。スマホのストップウォッチを見ながら走り、2分以内にリンクのボタンを押したのは間違い無い。2回繰り返したが、結果は変わらなかった。PLCアダプタのパッケージに書いてある「同一の電力線上」という条件を満たしていないようだ。一般家庭ならともかく、さすがに商業ビルでのフロア違いの接続は難しいのかもしれない。この「同一の電力線上」という定義がよく分からず、知り合いの電気設備屋さんにも聞いてみたが、一概に言えないよ、とのこと。PLCは、配電盤を乗り越えることはできない、という説明もネット上では散見される。少なくとも同じブレーカーの回路なら通信できるはずだが、そうなると通信できる範囲が狭すぎて、PLCの存在理由が分からなくなる。(このあたりは、情報不足なので、さらに調べてみたいと思います)

セキュリティは

今回使用したPLCアダプター「TL-PA4010 KIT」の通信は、128bit AES で暗号化されている。また、前項で触れたように、PLCは、配電盤を乗り越えることはできない。この欠点が、セキュリティ上は、利点になる。例えば、隣のビルで通信内容が拾われてしまう、というような心配はしなくて済む。

PLCによるネットワーク、SPEEDTESTの結果は、

PLCが普及しない原因のひとつとして、速度の遅さが指摘されている。20Mbps程度、という情報もあったが、PC1台だけなので、なんとかなるだろうと心配せず。そして実際に測定してみると、高速とは言えないが、45Mbpsという立派?な数字が出ていた。20Mbpsというのは、過去の話なのかもしれない。これをハブで分けて複数台のPCを接続、となると、厳しいかもしれないが、今回、台数は1台だけ、バックヤードのPCには、十分なスピードだ(と私は思う)。また最近は、よりハイスピードな規格のPLCアダプターも出てきているらしいので、今後は普及するのかもしれない。ただ、前項でも述べた「同一の電力線上」かどうか、素人には判断がつかず、試してみるしかない、という点が、PLC普及を阻害するネックとして、残るのではなかろうか。

PLC導入から2ヶ月

TP-LinkのPLCアダプター、TL-PA4010によるネットワーク復旧から、2ヶ月が経過したが、今のところ、安定して稼働している。以上、購入を検討している方の参考になれば幸いであります。